“映画 若おかみは小学生!”レビュー その2 「ポスト宮崎駿監督として」
“映画 若おかみは小学生!”レビュー その1からご覧下さい。
若おかみは小学生!の原作は児童文学であり、それを元にTVアニメ版と映画版が制作されている。
TVアニメ版
テレビ東京系列で朝の7時15分という、アニメとしてはかなり早い時間枠で放送された。昨今は朝6時台から朝アニメは放送されているが、小学生向けのアニメが主流だ。
若おかみは小学生!もそういったアニメの一つであり、おっこが両親を失い、祖母の経営する旅館に引き取られるというハードな展開ながら、小学生を中心とした視聴者に向け、笑いを交えて優しいタッチで展開してゆく。
キャラクターデザインも原作に準拠しており、シンプルで可愛らしい。
映画版
映画版ではキャラクターデザインがTVアニメ版に比べて、若干洗練されてる。
おっこはTVアニメ版よりも手足が長く、やや年長に見える。おっこのライバルとして登場するピンふりこと秋好旅館の跡継ぎ娘、秋野真月も努力家であり秀才として明確に描かれ、TVアニメのちょっと抜けたキャラクターとは印象が違ってくる。
また大人のキャラクターも全体的に鋭角な雰囲気となり、柔らかいTVアニメ版とは対象的だ。
あくまでも予想ではあるが、これは映画という大画面、高解像度に対応するためではないだろうか。若おかみは小学生!に限らず、映画版ではこの様にデザインが変わることは珍しくない。
TVアニメと映画と
変わったのはキャラクターデザインだけではない。
TVアニメ版では直接には描写されなかったおっこの両親が亡くなる交通事故のシーンが明確に描かれ、おっこがそのフラッシュバックに襲われ過呼吸となるシーンには胸が痛む。
両親との死別、親友との別れ、TVアニメでも描かれたが、それをよりマッシュアップした表現は、まさに映画だ。
原作にしろ、TVアニメ版にしろ、映画版にしろ、目指すものは同じだ。ただ目指すものは同じでも、表現の仕方も辿り着き方も、同じである必要はない。
書籍とテレビと映画と、媒体が異なればそれぞれに特化した表現がある。
ポスト宮崎駿監督
映画版は、やはりスタジオジブリに寄せて作られたのは明確である。それはやはり、ポスト宮崎駿監督という業界の理由もあるだろう。
昨今の日本のアニメ映画であれば、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの庵野秀明監督、「時をかける少女」の細田守監督、「君の名は」の新海誠監督、「この世界の片隅に」の片渕須直監督など、ポスト宮崎駿監督とされるアニメ監督が名を連ねている。
その中でも、より宮崎駿監督的、スタジオジブリ的な表現ができる監督といえばスタジオポノックの米林宏昌監督だろう。
東映動画から始まり、日本アニメーション、テレコム、そしてスタジオジブリへと連なっていく宮崎駿監督の系譜。その中でもかつての日本アニメーション的な表現こそが、ポスト宮崎駿監督として必要な資質ではないかと考える。
そうなるとやはり、米林宏昌監督か高坂希太郎監督が、最も宮崎駿監督的と言えるだろう。
かつての日本アニメーションは、世界名作劇場を制作し、日本アニメの、おそらく最も純粋な児童向けアニメのエッセンスを磨き上げた。宮崎駿監督はそれを作り上げた第一人者であり、それはいずれ誰かに引き継がれなければならない。
「映画 若おかみは小学生!」は、それを引き継ぐだけの資質がある作品であったと思う。このような作品こそ、これからの日本アニメに必要であるはずだ。
終
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