トキワ荘レジェンド、長谷邦夫先生との思い出
こちらは長谷邦夫先生の作品で「椎名町奇譚」。椎名町はかつてトキワ荘があった町です。
言わずもがな、滝田ゆう先生の寺島町奇譚のパロディですね。
漫画家の長谷邦夫さん、81歳で死去
2018年12月3日1時45分 スポーツ報知漫画家の長谷(ながたに)邦夫さんが11月25日に、うっ血性心不全のため亡くなったことがわかった。81歳だった。
長谷さんのフェイスブックに、長男の洋之さんが「長谷邦夫は、栃木県高根沢町の病院にて療養中でしたが、2018年11月25日、うっ血性心不全のため亡くなりました。81歳でした」と代筆で訃報を掲載した。
葬儀は親族のみで行ったそうで「生前の父の活動にご協力いただいたこと、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。父との思い出話などございましたらコメントにて皆さんとシェアして頂けたらと思いますので、よろしくお願いいたします」とつづった。
長谷さんは、豊島区南長崎にあった、手塚治虫さんらが住んでいた伝説の「トキワ荘」の“通い組”の一人。赤塚不二夫さんのマネジャーを務めたこともあり、フジオ・プロの創立にも参加した。井上陽水の「桜三月散歩道」の作詞もしている。
もはや伝説と読んでも差し支えがないであろうトキワ荘。その豊島区のアパートに集った漫画家のお一人であった長谷邦夫先生が亡くなられました。
漫画関係の集まりでお顔を見たことがある程度の面識でしたが、長谷邦夫先生からコメントを頂戴したことがありました。
ここにそれを転載し、ご冥福をお祈りさせていただきたいと思います。
以下、長谷邦夫先生とのやり取り
長谷邦夫
ぼくは、田中先生とは(※編集部注 この田中先生は田中圭一先生のことです。)、ちょっとご挨拶程度でしたかね。でも、会の帰りぎわに、ご丁寧な挨拶。大変恐縮しました。
紫雲荘、赤塚氏在住時、何度も遊びに行っています。
彼のステレオで、最初の「デモ・レコード」を聴きました。
音楽じゃありません。
「ピンポンを打ち合う音!」音が、スピーカーの左右から出る。
今、こんなの聴いたら、お笑いですよね~♪
2011/10/14
長谷先生、はじめまして。コメントありがとうございます!
紫雲荘、部屋が広くなったりトイレがついたりと改装されているとの事ですが、柱など当時の面影を残す所が多々あり感無量です。
田中先生が仰られていましたが、手塚先生の絵を使った漫画表現は赤塚先生と長谷先生の影響を強く受けていると言う事で、トキワ荘の偉大さを改めて知った気がします。
ピンポンを打ち合う音を聞くレコードですか。ステレオの効果を確認するには確かに適切ではありますが、あまりにもシュールで今では全く想像が出来ませんね。
2011/10/17
長谷邦夫
有名マンガ家のキャラクターでパロディを描いたのが、ぼくがおそらく一番早いのだと思います。
みなもと太郎さんの『ホモホモ7』などと、同時期で、みなもとさんのお話では、マガジンの
記者が」、こういったパロディのギャグについて<特に面白いとは思わず>でも連載させて
いたんだ~ということを聞き、びっくり」しましたね。
ぼくの作品も、そう思って、単にヘンナヤツ!と、見るかたも多かったんでしょう。
小生も、雑誌「りぼん」の編集さんから、「これのどこが面白い~」って、新宿の酒場で言われたんです。
ですから<新しい表現>というものは、ほとんど、こうした抵抗に出会っているはじですよ。
<文学>も同じです。
村上春樹さえ、日本の純文学界からは<無視されていた>んですから!!
2011/10/18
他人の絵や作風でパロディを描くという、今では手法としてポピュラーな事でもそれを開拓された先生の先見の明には頭が下がります。
新しい表現、昨今では作画のデジタル化が進み、また紙媒体から携帯電話、電子書籍への移行など急速な変化があります。
またワークショップの主題であったコミpo!の3Dなど、少し前までは極めて珍しい表現方法が当たり前に誰でも出来るようになってきました。
ワクワクする反面、自分がその流れについていけるのかと不安に感じたりもしますが、それに抗ったり無視したりするような事はしたくないですね。
どんな新しい表現でもきっと、面白い漫画は創れるはずですから!
漫画表現というのはそれだけ懐の広いものだと思います。
2011/10/19
長谷邦夫
デジタルで「絵を描く」ということが出来ると知って、ぼくは、最初デスクトップを買ったんですよ。
ソフトが、ものすごく高価な時代でして、そこにも限界が見えていた時期です。
あきらめてしまった…。お金があったら、描いていたこも。
その後、マンガ雑誌に描かないようになり、マンガ講師…。はぐれた感じです。
いま描いている、トキワ荘の回想~パロディ~ファンタジー~というマンガでは
トキワ荘時期は「トーン」さえ無かったので、今回の作品には、わざとトーン不使用にするか?なんて
ことを考えました(実行はしませんが~笑~)。
絵はピグマで描いてます。ゼブラで描くことがいつのまにかなくなっています。
デジタル~ペンタブ~なんかも、時間の余裕があったら、テストというか、老人の手習いをいずれやってみたいです。
ほんとにマンガは、こうしたことに<自由さ>をもっているメディアですね。
<新しいテーマ・内容>で挑戦すべき青年には、新しい技術で挑戦もしてほしい。
「電子本」でも公開の時代ですから…。
古さ(作画法)を新しい(アイデア)で、新鮮に感じさせる!
最新(のデジタル画)で『鳥獣戯画』の世界を描いてみせる!
どっちも、マンガ家の考え方で選べるし、両方を自分の力にして(欲張って)いくのも面白い。
ぼくは、もうあとわずかしか人生の時間がありません。
今後、ジョブス以上の天才が出て、驚くべき新しい表現法が登場する可能性大です!!
若い方は、コレだけ、と限定せず、挑戦を続けていくべきでしょうね。
今回の単行本では、ぼくの発想でヘンなタイムマシンを作り
トキワ荘へ行ってきました。
ですから、これまでのトキワ荘回想モノとは
完全に違うマンガなんです。
御期待下さい!
2011/10/20
デジタル作画、最近ではパソコンもソフトも安価になり、本当に誰でもができるようになりましたね。私もパソコンを購入してから徐々にデジタルに移行し、もう四年くらいはペン先で描いたりトーンを手貼りしたりしていません。
ネーム以外は完全にデジタル作業です。
私の周りも殆どがデジタル作画ですが、それでもペン先独特の描き味にこだわりペン入れまではアナログ作業と言う人も結構います。
やはりペンタブレットではペン先独特の描き味は完全には再現できないので、こだわる方は多いですね。
ピグマは便利ですよね。漫画誌を読んでるとベテランの方でもピグマを使っている方も多いですし、背景を描く時には線が均一なんで使い勝手がいいです。
太さも沢山あって、しかもペン先と違って安いしすぐに乾きますから。
キンドルが日本に年内にも参入というニュースが日経に出ていましたが、これから漫画のデジタル化は急速に進んでいくでしょうね。
田中圭一先生も仰ってましたが電子書籍化で漫画が白黒からフルカラーになったように、漫画表現と言うものがデジタル化によってもう一つ高い次元にレベルアップすると思います。かつて漫画は映画(映像作品)と比べられる事が多かったですが、この境目も曖昧になっていくのではないでしょうか。
先生の新作、楽しみにしております!
我々はトキワ荘というのを先生方の記憶からしか知る事が出来ません。先生の作品を通してトキワ荘の記憶を少しでも共有できる事が楽しみです。
2011/10/20
長谷邦夫
自分でデジタル作業で漫画単行本を描けたら~~「夢」ですが~かなり現実でもあるという時代です。
よくぞ、ここまで<生きた>なあ~っていうのが、ぼくなんかのトシの実感かも。
漫画が、これよりさらに表現領域を絵画的に拡大!!ということになると、
今度は「中身のテキスト」のレベルや、全く新しい<漫画原作文学>が求められていくはずです。
高度のマンガ絵に対して、そのテキストの発想がチャチだと、
ますますマンガの下手さが目立ってしまいます。
バランスが絶妙のときに、領域は拡大し、
さらに「定着化」へと進むはずです。
そのときには、ぼくは天国~~~。
すこしでも長生きなのがいいのか?
悩みますよ。
2011/10/20
内容、ネームに重きがこれまで以上におかれるでしょうね。誰でもが気軽に表現できる時代だからこそ、これまで以上に独創的で感受性の高い内容が求められると思います。
上手い絵、洗練された絵はデジタルを用いれば誰でもがある程度のものを描ける様になるのですから。
そういう時代だからこそ、先生のような方に若手にご指導いただくもの大切な事だと思います。
私も先輩の漫画家や、先生には及ばないもののかなりベテランの漫画家先生から色々教えていただく事があり、技術ではなくより漫画において本質的な事を伝えられている気がします。
末永く先生のような方が活動されてこそ、漫画界の発展もあると思います。
2011/10/22
長谷邦夫
ありがとう御座います。
土曜日は、小生生誕の地、葛飾金町なるところへ行き、そこの図書館会議室で、50名以上の大人の方に
「紙芝居と白土三平」というテーマで、約2時間お話をしてまいりました。
このテーマは初めて話した~ということで、目的の半分くらいで終わった感じです。
ついさっき、帰宅したばかりです。
あすは、現在進行中の単行本用マンガ作品の作画。
トキワ荘を舞台??に、ちょっとシュールなマンガを書いていきます。
(実話もアリ)
70歳を、とっくに過ぎて、下手なマンガを描いて、刊行出来るなんて、思ってもいなかったんです。
文字のクロニクル原稿は、400字1000枚書き上げております。
ちょっと多いので、校正の際に削る作業が残っています。
これも、来年発行だと思うんですが…。
2011/10/23
講演、お疲れ様でした。
トキワ荘や、あるいはその時代に活躍された漫画家で現役で活動されている方はもう本当に少なくなられてしまい哀しいですが、先生のように新作を出される方がおられて一まんがファンとして嬉しいです。
トキワ荘というのが、どうもやはり忘れられ始めていると言うか、かつてのようにまんがファンであれば誰でも一種の信仰心があったものではなくなっているような雰囲気を感じる中、トキワ荘に深い関わりのあった先生の、しかもトキワ荘を扱った新作が出ると言うのは感慨深いものがありますね。
是非新作が出た折には、紫雲荘で思い出とともに語っていただけますと嬉しいです!
2011/10/25
長谷邦夫
はい、ぜひ「紫雲荘」へ行ってみたいものと、思っております。
そのためにも、作品を早く完成させたいですね。
今日は、月曜日に宇都宮の専門学校講義終了のあと、すぐ出掛けていた
大垣市の大垣女子短期大学の講義から、戻りました。
あすは、自宅作画です。
週の半分が、作画日と言う感じです。
2011/10/25
その節は是非、私も先生のお話を伺いたいと思います。
なかなかそのような機会はありませんし、本当のトキワ荘のお話を聞けるのは一ファンとして何よりも嬉しい事ですから!
急に寒い日が続きますが、お体に気をつけてください。新作、楽しみにしております。
2011/10/27
長谷邦夫
がんばって、一ページでも、仕上げて、少しずつ少しずつ…前へ進む!これですね。ヒマが出来たら~では
一生掛っても仕上がらないのが「マンガ」「小説」の創作ですね。
あすは、「小説演習」で、宇都宮の専門学校へ行きます。
以上、転載終了
長谷邦夫先生はこの後、ご病気で入院されてしまい、長い闘病生活に入られました。
この時に執筆されていた漫画は「伝説 トキワ荘の真実」であると思われます。
ご病気をされる前は漫画を描く気力を満たしておられただけに、その後闘病されたまま亡くなられたことが本当に残念です…。
一漫画ファンとして、長谷邦夫先生の漫画家に残された功績を語り継いでいきたいと考えております。
アニメ、漫画関連アイテムをご整理の際は、オタクバイヤーへご相談ください!